はじめまして。弁護士の前田と申します。これまで主に中小企業の顧問業務を中心とした企業法務全般に関するサポートや個人の相続のサポートを中心とした業務を行ってまいりました。このメールマガジンの読者の皆様の中には、不動産オーナーの方が相当程度含まれているとお伺いしていますので、不動産オーナーの方々にご興味を持っていただけるようなテーマでお話をさせて頂きたいと思います。今回は、「目的外違反と賃貸借契約の解除」というテーマでお話をさせて頂きます。
不動産オーナーより、「賃借人に契約で定めた目的とは違う使われ方をされていて困っている。出て行ってほしいがどうしたらよいか。」というご相談を受けることは珍しくありません。一見すると契約違反なのだから契約は解除(終了)することが出来て当然とも思われますが、賃貸借契約の解除については、単に契約違反があるだけではなく、「信頼関係が破壊されるに至ったと評価できるか。」という要件も必要となってくるため、この点を個別の事例ごとに検討しなければなりません。
では、どのような目的外利用であれば契約の解除が認められるでしょうか。例えば、「賃借人は女性で一人暮らしと聞いていたが、報告なく彼氏と同棲を始めている。」という場合はどうでしょうか。基本的には、これだけでは信頼関係が破壊されたと評価するのは難しいでしょう。しかし、居住者は女性に限定されることが契約上定められていればどうでしょうか。わざわざ女性専用の物件を賃借している他室の入居者の期待等も考慮すれば、男性が居住しているという状況は非常に深刻な問題です。このような場合には、賃借人に催告等適切な手続きを行ったうえで、それでもなお状況が改善されないのであれば、目的外利用を理由として契約を解除することができる可能性が高いといえるでしょう。
その他にも、「居住用として貸した物件で事業を開始している。」といった事例もしばしばご相談を頂くことがありますが、これもその事業の内容によって信頼関係の破壊が認められるかの判断は分かれるところです。このような事例も、その事業により物件に不特定多数の往来を伴うか、事業により室内設備の劣化等を招くか、騒音が生じるか等、様々な観点より検討が必要です。事案によって解除ができるかどうかの結論には差が出ますので、判断に迷う場合は、弁護士への相談もご検討下さい。